最低賃金だけじゃない――2026年10月1日、大阪の社長が確認すべき3つの労務改正(カスハラ・同一労働同一賃金・106万円の壁)

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最低賃金の話は、もう聞いた。でも、それだけじゃない

大阪府の最低賃金が2026年10月1日に時間額1,231円へ引き上げられることは、前回の記事ですでに詳しくお伝えしました。多くの方に読んでいただき、大阪の企業の皆さまの関心の高さを実感しています。

> 令和8年度最低賃金、全国47都道府県すべて確定|大阪1,231円・関西4府県の最新額まとめ

ですが、実は2026年10月1日に施行される労務関連の改正は、最低賃金だけではありません。同じ日に、カスタマーハラスメント対策の義務化、同一労働同一賃金ガイドラインの改正、そして「106万円の壁」の撤廃という、3つの大きな制度変更が一斉に始まります。

「うちは最低賃金の対応だけしておけば大丈夫」と考えていると、思わぬ対応漏れが生じかねません。本記事では、大阪の中小企業の社長さまに向けて、この3つの改正について「何が」「いつから」「何をすればよいか」を、社会保険労務士の視点からチェックリスト形式で整理します。


1. カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が、すべての企業の義務になる

何が変わるのか

2026年10月1日、改正労働施策総合推進法により、従業員を1人でも雇用しているすべての事業主に、カスハラ対策の実施が義務付けられます。中小企業だからといって猶予はありません。パート・アルバイトを含むすべての労働者が保護の対象です。

厚生労働省の指針では、企業が講じるべき措置が次の5つの柱・10項目に整理されています。

  1. 会社の方針の明確化と周知(毅然とした対応をする旨の明示、対処内容の周知)
  2. 相談体制の整備(相談窓口の設置・周知、担当者が適切に対応できる体制)
  3. 発生時の迅速な対応(事実確認、被害者への配慮、再発防止)
  4. 悪質なケースへの抑止措置(警察通報・出入り禁止などの基準をあらかじめ定める)
  5. そのほかの措置(プライバシー保護、相談を理由とした不利益取扱いの禁止)

罰則はあるのか

措置義務そのものに直接の刑事罰はありませんが、行政からの報告要求に応じない・虚偽報告をした場合は20万円以下の過料の対象になります。勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性もあり、さらにカスハラを放置して従業員が心身を害した場合は、安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われるリスクもあります。「うちは大丈夫」では済まされない改正です。

大阪の社長が今すぐやるべきこと

  • 「カスハラには毅然と対応し、従業員を守る」という会社の方針を一文で明文化する
  • 既存のハラスメント相談窓口を、カスハラの相談にも対応できるよう周知し直す
  • 「一人で対応させない」「記録を残す」「悪質な場合は警察に通報する」など、現場の対応ルールを決めておく
  • パワハラ対策の枠組みがすでにある会社は、それを土台に転用できる

2. 同一労働同一賃金の「ガイドライン」が5年ぶりに改正される

何が変わるのか

2026年10月1日、パートタイム・有期雇用労働者を1人でも雇用するすべての事業主を対象に、同一労働同一賃金に関するルールが改正されます。新たな法的義務は「雇い入れ時の労働条件明示事項の追加」の1点のみで、労働条件通知書に「待遇の相違について説明を求めることができる」旨の記載が必要になります。これに違反すると10万円以下の過料の対象です。

あわせて、賞与・退職手当・無事故手当・家族手当・住宅手当・福利厚生施設・病気休職・夏季冬季休暇・褒賞という9項目について、「どのような待遇差なら不合理とされやすいか」の判断基準がガイドラインで具体化されました。「正社員だから」「パートだから」という理由だけでは、待遇差の説明が通りにくくなります。

大阪の社長が今すぐやるべきこと

  • 労働条件通知書・雇用契約書のひな形に、待遇差の説明を求められる旨の一文を追加する
  • 説明を求められたときの窓口(部署・担当者・連絡先)を決めておく
  • パート・アルバイトと正社員の待遇一覧(賞与・手当・休暇など)を洗い出し、差がある場合はその理由を説明できるか点検する
  • 「正社員だから」で終わらせず、業務内容・責任・異動の範囲まで踏み込んで整理する

3. パートの社会保険加入基準「106万円の壁」が撤廃される

何が変わるのか

2026年10月1日、社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務が生じる賃金要件「月額88,000円以上(年収約106万円)」が撤廃されます。全国的な最低賃金の引き上げにより、週20時間働けば自然とこの賃金要件を満たすケースが大半になったための見直しです。

撤廃後、短時間労働者が社会保険に加入する要件は次の3つになります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 2か月を超えて雇用される見込みがあること
  • 学生でないこと

ただし「企業規模要件(従業員51人以上)」は、当面残ります。従業員数(厚生年金保険の被保険者数)が51人未満の企業は、2027年10月以降、規模に応じて段階的に対象へ組み込まれていきます(36〜50人は2027年10月、21〜35人は2029年10月など)。大阪の中小企業の多くにとって、「今回は関係ないが、数年内には対象になる」制度変更です。

知っておきたい軽減策

新たに社会保険料の負担が生じる企業のために、次の支援制度があります。

  • 保険料調整制度:新たに加入した短時間労働者の保険料負担を、企業が最大3年間軽減できる制度(2026年10月開始)
  • キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース):労働時間の延長などを行った事業主に、従業員1人あたり最大75万円(小規模企業の場合)を助成

大阪の社長が今すぐやるべきこと

  • 自社の厚生年金保険の被保険者数を確認し、いつ自社が対象になるかを把握する(51人以上はすでに対象、それ未満は2027年以降)
  • 週20時間以上働くパート・アルバイトの一覧を作成し、今後の対象者を洗い出しておく
  • 対象となる場合の保険料負担を試算し、保険料調整制度や助成金の活用を検討する
  • 「社会保険に入りたくない」「入りたい」双方の従業員の希望を早めに確認し、シフトを調整する

まとめ:3つの改正を一覧で比較

改正施行日主な対象罰則・リスク
カスハラ対策義務化2026年10月1日従業員を1人でも雇用する全事業主過料20万円以下(虚偽報告時)、企業名公表、安全配慮義務違反による賠償リスク
同一労働同一賃金ガイドライン改正2026年10月1日パート・有期雇用労働者を雇用する全事業主過料10万円以下(労働条件明示義務違反)
106万円の壁撤廃2026年10月1日当面は従業員51人以上の企業(51人未満は2027年以降順次対象)直接の罰則はないが、未加入は社会保険法違反のリスク

3つとも「まだ先の話」ではなく、すでに目前です。特にカスハラ対策と同一労働同一賃金は、企業規模を問わずすべての事業主が対象になる点に注意してください。


労務改正への対応、大阪綜合労務管理事務所にご相談ください

大阪綜合労務管理事務所では、今回ご紹介した3つの改正について、次のようなご支援を行っています。

  • カスハラ対策の基本方針・社内規程・相談窓口の整備
  • 労働条件通知書・雇用契約書のひな形改定、待遇差点検のサポート
  • 社会保険加入対象者の洗い出しと、保険料調整制度・助成金活用のご提案
  • 就業規則全体の見直し(最低賃金引き上げ対応とあわせて)

「何から手をつければいいか分からない」という場合も、まずは現状の整理からお手伝いします。お気軽にご相談ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. うちは従業員10人程度の小さな会社です。3つとも対応が必要ですか?
A. カスハラ対策義務化と同一労働同一賃金ガイドライン改正は、企業規模を問わずすべての事業主が対象です。106万円の壁撤廃(賃金要件の撤廃)は、当面は従業員51人以上の企業が中心ですが、2027年10月以降は51人未満の企業にも段階的に対象が広がるため、早めに自社の対象時期を確認しておくことをおすすめします。

Q2. カスハラ対策として、就業規則の改定は必須ですか?
A. 法律上の義務は「方針や対応方法を定めて周知すること」であり、必ずしも就業規則に規定する形式までは求められていません。ただし、不利益取扱いの禁止を定める方法として指針が就業規則等への規定を例示していることや、懲戒処分を行う際には規則上の根拠が必要になることから、実務上は就業規則等への反映が推奨されています。

Q3. 同一労働同一賃金の対応で、正社員の手当を減らして差をなくしてもよいですか?
A. おすすめできません。正社員側の待遇を引き下げて差をなくす方法は、今回の改正の趣旨に沿わないとされているほか、労働条件の不利益変更の問題も生じます。パート・有期社員側の待遇を改善する方向で検討するのが基本です。

Q4. 106万円の壁が撤廃されたら、パートの手取りは必ず減るのですか?
A. 新たに社会保険に加入すると保険料負担が生じるため、当面は手取りが減る場合があります。一方で、保険料調整制度による負担軽減や、将来受け取る年金額の増加、傷病手当金など保障の充実というメリットもあります。従業員一人ひとりの働き方の希望を聞きながら、丁寧に説明することが大切です。


出典:厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)、厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法施行規則/雇用管理指針の主な改正事項」、厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」、大阪労働局発表(令和8年8月7日、大阪府最低賃金の改正決定について)による。制度の詳細・最新情報は厚生労働省・大阪労働局の公式発表をご確認ください。

(本記事は大阪綜合労務管理事務所が、社会保険労務士としての実務知見と公的機関の発表資料をもとに作成しています。)


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