労災保険に加入できるのは?
労災保険(労働者災害補償保険)は、労働者が業務上や通勤途上で負傷・疾病・障害・死亡した場合に補償を行う制度です。法人・個人を問わず、従業員を1人でも雇用していれば事業主は加入が義務となり、保険料は全額事業主が負担します。
■ 労災保険の加入対象者
| 区分 | 加入対象となる人 | 補足 |
|---|---|---|
| 正社員 | フルタイムで働く従業員 | 雇用形態に関わらず対象 |
| アルバイト・パートタイム | 短時間勤務でも賃金を受け取れば対象 日数・時間数は問わない | 日数・時間数は問わない |
| 契約社員 | 有期契約の社員 | 賃金を支払われていれば対象 |
| 外国人労働者 | 日本国内で雇用契約を結んでいる外国人 | 国籍を問わず対象 |
■ 加入対象外の人
| 区分 | 対象外となるケース | 補足 |
|---|---|---|
| 自営業者・事業主・家族従業員 | 労働者ではないため原則対象外 | ただし、弊所併設の労働保険事務組合の「特別加入制度」で加入可能 |
■ まとめ
- 事業主は、従業員を1人でも雇用していれば労災保険に加入義務があります。
- 従業員は、賃金(給与)を受け取り、業務に従事していれば正社員・パート・アルバイト・契約社員・外国人労働者すべてが対象です。
- 自営業者や役員・家族従業員などは原則対象外ですが、「特別加入制度」を利用することで加入可能です。
労災保険の特別加入制度とは?
事業主や役員、自営業者、フリーランスなどは、原則として労災保険に加入できません。しかし、前ページ参照の「特別加入制度」を利用すれば、業務中の事故やケガに備えて労災保険に加入することができます。特に、個人事業主では、建設業の一人親方などが利用している制度です。
■ 特別加入の対象者
| 区分 | 具体例 | 加入可否の目安 |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 建設業の一人親方、運送業者、農業従事者など | 業種ごとに条件あり |
| 法人の役員 | 代表取締役、取締役 | 業務に従事する場合は加入可 |
| 家族従業員 | 配偶者や親族 | 事業に従事していることが条件 |
| フリーランス | デザイナー、ライター、運送業など | 一部業種のみ対象 |
■ メリットと注意点
| メリット | ・ 業務中や通勤途上の事故に対して、医療費・休業補償・障害補償・遺族補償が受けられる ・ 安心して事業に専念できる |
| 注意点 | ・ 届け出た業務以外は対象外となる場合あり ・ 保険料は個人ごとの負担 ・ 手続きは労働保険事務組合や特別加入団体経由が必要 |
■ まとめ
労災保険の特別加入制度を利用することで、自営業者やフリーランスでも業務災害に対する保障を確保できます。業務中の万が一の事故やケガに備えて、この制度の活用を検討することは大きな安心につながります。
労災保険料はどのように計算されますか?
労災保険料(労働者災害補償保険料)は、労働者が業務上や通勤途上でけが・病気をしたときに給付を行うための保険料です。
〈基本の計算式〉
労災保険料 = 支払った賃金総額 × 業種ごとの保険料率
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 賃金総額に含まれるもの | 基本給、残業代、通勤手当、各種手当、賞与など |
| 賃金総額に含まれないもの | 退職金、結婚祝金、出産見舞金など |
| 保険料率 | 厚労省が業種ごとに毎年公表 業種により労災発生リスクが異なるため、料率も異なります。 |
| 負担者 | 事業主が全額負担(労働者は負担しません) |
| 納付方法 | ①年度の賃金総額を見積もって「概算保険料」を申告・納付 ②翌年度、実際に支払った賃金総額で「確定保険料」を申告・精算 ③この手続きを「年度更新」といい、毎年6/1~7/10までの間に申告・納付を行います。 |
一人親方や中小事業主は、給付基礎日額(日額3,500円~25,000円など)を選び、それに呼応する保険料を労働保険事務組合や特別加入団体経由で個人ごとに支払います。
【まとめ】
- 労災保険料は「賃金総額 × 保険料率」で決まり、全額を事業主が負担します。
- 特別加入や年度更新の仕組みもあり、毎年見積もりと精算を行う点が特徴です。
- 建設業では、請負金額に労務費率を乗じた額から算出されることが多いです。
労災事故が起こった場合の給付内容は?
労災保険(労働者災害補償保険)では、労働者が業務災害(仕事中の事故や疾病)または通勤災害(通勤途中の事故などで)、負傷・疾病・障害・死亡した場合に、次のような給付が行われます。
業務または通勤によるけがや病気の治療費を支給されます。
医療費(診察、手術、薬代、入院費、通勤費など)を必要な範囲で全額支払われます。
けがや病気の療養のため労働することができない日が4日以上になった場合、休業4日目以降、給付基礎日額の60%相当額に加え、休業特別支給金として20%相当額が支給されます。
療養開始から1年6か月を経過しても治癒せず、一定の状態(治癒困難)にある場合、等級に応じて、「傷病年金」「傷病特別支給金」が支給されます。
傷病が治った後に障害が残った場合に支給されます。
障害の程度(等級1級から14級に応じて、「障害年金」「障害特別支給金」が支給されます。
労働者が死亡した場合、遺族に支給されます。
遺族の人数に応じて「年金」「一時金」が支給されます。さらに、「遺族特別支給金」も支給されます。
被災労働者が死亡した際、葬祭を行う遺族等に支給されます。
一定額(定額または基礎日額に基づく算定額)が支給されます。
障害または傷病で介護を必要とする状態になった場合に支給されます。
常時介護・随時介護に応じて支給額に上限があります。
【補足】
〇「給付基礎日額」は、事故前3カ月間の平均賃金(日額)に基づいて算出されます。
〇特別加入者も選択した給付基礎額をもとに上記の給付が行われます。
〇休業給付は、休業を開始して4日目以降が対象で、初日から3日間は労災保険からの給付はありませんが、労働者の場合は事業主が休業補償(平均賃金の60%)を行うこととなります。
早めに社会保険労務士に相談すること、
これが一番の解決方法です。
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まずはお気軽にご連絡ください。



